今話題になっている『オッドタクシー』について語ります!とても複雑なストーリーなので、分かりにくいところを分かりやすくできたらと思います。
オッドタクシーとは?
『オッドタクシー(ODDTAXI)』とは、製造制作会社「P.I.C.S」と「OLM Team Yoshioka」が共同制作したテレビアニメです。2021年4月〜6月に、テレビ東京系にて深夜(2時05分〜)に放送されました。放送されたのは全13話。ジャンルは「ミステリー」「サスペンス」に分類されます。
2022年4月1日(金)より映画公開が決定しました。
オッドタクシーのあらすじ
見慣れた街のはずなのに、この街は少しなにかが違う気がする。
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。
身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。
趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。
一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。
彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、
https://oddtaxi.jp/
いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、
街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…
何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。
ミステリーと言われればミステリーなのかもしれませんが……最初にあらすじを読んだ感想は、
「で、何の話?」
が正直なところでした。
なぜ話題になっている?
さて、オッドタクシーは今とても話題になっています。
というのも、アニメにはそこまで詳しくない私ですら「人間ドラマが好きだったら絶対観たほうがいい!これ人間ドラマだから!!!」と友人から強く勧められ、それからあれよあれよという間にテレビやネットで『オッドタクシー』の文字を見ることが増えていきました。
アメトーク「マンガ大好き芸人‼」でも、「(のほほんとした)絵に騙されちゃいけない」と麒麟の川島さんがご紹介されていました。
なぜこれほど話題になっているのでしょうか?
情報が少なく、私自身「よし!観るか!」と重い腰を上げるまで時間がかかったので、ネタバレに配慮しながら解説していこうと思います。ただし、最初に言っておきます。
何も知らない状態で観るのが、1番面白いです。
本格ミステリー&サスペンス ネタバレ度★★☆
ジャンルは「ミステリー」&「サスペンス」です。
ミステリーとは、主人公の目線で犯人を推理していく「謎解き」。サスペンスとは、謎の有無に関係なく、不安、緊張、恐怖心のような「感情・心理」が描かれていることを指します。
オッドタクシーの中心となる謎は、練馬区女子高生失踪事件です。「本格」ミステリーと言ったのは、ミステリーに欠かせない数々の伏線が散りばめられているから……です。
ちなみにオッドタクシーの「オッド」は英語で「奇妙な、風変わりな」という意味。タイトルからもサスペンス要素が感じられるようになっています。
時代は現代!舞台は東京! ネタバレ度★☆☆
アニメでは、「スマホ」「バズリ」「T○itter」「You○ube」といった現代のツールや言葉が当たり前に使われています。
その上で、
「気持ち悪い……スタバで原稿っていう謎のクリエイターアピールも余計だし、面白い現場を見たのみならず、それをこんな端的に伝えちゃう私、マジセンスの塊っしょっていう隠しきれない自惚れ感も気持ち悪い」(小戸川)
「ジェネレーションギャップアピールいらねえんだよ」(小戸川)
「自分に対する極端な否定と嫌悪、そういうとこが自己愛強いって言ってるんだ。普通の奴はそこまで自分に興味ない」(ドブ)
といった、現代人が心で抱えているものを言語化したような台詞が次々と出てきます。
ここまで今の時代を反映させているコンテンツもなかなか珍しく、時代風刺アニメとしても充分楽しめました。
グランドホテル方式 ネタバレ度★☆☆
グランドホテル方式とは、ホテルのような一つの大きな場所に様々な人間模様を持った人々が集まって、そこから物語が展開する方式です。群集劇、群像劇とも呼ばれます。
今回の舞台はホテルではなく「東京」ですが、絡み合った糸が解けていくように、入り組んだ物語は徐々にキレイな1本の糸になっていきます。13話のうち、8話くらいまでは大きな動きがないため、そこで辞退してしまう人もいるかもしれませんがもったいないです……!そこまで観たなら、最終話までは観ましょう。
個人的に、1人1人の環境、過去、心理描写に丁寧にスポットが当てられること、詳細から全体に拡大したときの予想外の繋がりが見えることからグランドホテル方式が大好きです。今回は絵が動物ですが、『有頂天ホテル』『エイプリルフールズ』が好きな人にはハマると思います。
ちょっと変わった声優さん ネタバレ度★☆☆
主役の小戸川は今をときめく花江夏樹さん。花江夏樹さんと言えば『鬼滅の刃』の炭治郎役ですね!
そして『ラブライブ』星空凛役の飯田里穂さん(ちなみに私は『天才テレビくん』時代のファンです)、『東のエデン』滝沢朗役の木村良平さん、『ONEPIECE』ウソップ役の山口勝平さん、『ラブライブ』園田海未役の三森すずこさんなどベテランが並ぶのですが、本作はそれだけではありません。
ミキ、ダイアン、トレンディエンジェルのタカシさん、森三中の村上知子さんとお笑い芸人さんがご活躍されています。そして特別出演に俳優の高杉真宙さん。この“ちょっと変わった”演出にも注目が集まったと思われます。
感想
友人に勧められたのを機に、私も観てみましたが、
お、おもしろい…………!!!!!!
正に1人1人……いや、1匹1匹の環境、過去、心理描写、私の大好きな人間ドラマ要素満載でした。
グランドホテル方式ということは分かっていたので8話くらいまで流し見していたのですが、流し見しちゃダメでした。後半だけでは回収できないくらい、前半から伏線だらけでした。
13話という長さも丁度良かったです。これが50話、100話と続いていたら頭混乱していましたね。登場人物の数も、13話分に見合った数で、それぞれに愛着が湧きました。ただ、欲を言うならあと1話だけ続きが観たい……!(←映画化が決まりましたね!)
それでは、熱が冷めないうちにネタバレ&考察に移りたいと思います。
ネタバレ&考察
ここからはネタバレ&考察です。
動物に見えていたのは小戸川だけ
これが最大の伏線回収&ネタバレではないでしょうか。
小戸川は、ずっと医者の剛力から「共感覚」を疑われていましたが、その正体は「高次脳機能障害による視覚失認」でした。要は「目」に問題はないはずなのに、見ているモノのカタチが認識できなくなるという病気です。そのため普通は、モノがぼんやりした塊のように見えたり、全体像が把握できなかったりするのですが、小戸川の場合は、見ているモノが脳で「動物のカタチ」として認識される異例でした。
視聴者が見てきた動物の世界は、実は「小戸川目線」の世界だったんですね〜。そうとも知らず「これ実写化したらいいのにね」なんて呑気に言っていた私……。13話の冒頭で、ほとんどの視聴者がハッとしたと思います。
いじめ、無理心中、動物への好意、小戸川の壮絶な過去
小戸川は子供の頃、同級生たちからいじめられていました。また父親に愛人がおり、母親がそれに苦しんでいた状況になんとなく気づいていました。結果、本来なら大好きであるはずの母親の無理心中に巻き込まれ、高次脳機能障害による視覚失認を引き起こします。
人間を嫌った小戸川でしたが、本来なら愛すべき存在である父親が唯一動物図鑑をくれたこと、動物には普通に話しかけることができたこと、動物園で動物を観る時間だけが幸せだったことなど、動物には好意を抱いていました。その結果、人を「動物」として脳が認知することに繋がったと考えられます。
小戸川や大門兄弟を救っていたのは、反社会勢力のボス黒田
母親の無理心中で1人だけ助かった小戸川は、天涯孤独になります。しかしその後、慈善団体に属する支援者のおかげで1人でも生活ができるようになります。子供の頃の日記によれば、支援者は『マレーバクのおじさん』でしたが、大人になった小戸川は忘れていました。
また、警察の大門兄弟はタクシー事故で両親を亡くしており、小戸川と同じく支援を受けて生活していました。1話から、大門兄は反社会勢力に何故か協力しているのですが、その理由が反社会勢力のボス(黒田)が支援者だと気づいていたからだと12話で大門本人の口から明かされます。
大門兄弟が持っていたキーホルダーは交通遺児育英金の支給が終わった記念に貰えるもので、小戸川のタクシーにも同じものがぶら下がっていました。11話で大門兄がタクシーにぶら下がっているお守りを見ながら「俺たちは最初から仲間だよ」と言ったのは、小戸川も自分と同じ支援者(黒田)に支援されていたことが分かっていたからです。
13話で再度事故に遭った小戸川は、子供の頃の記憶を取り戻します。そこでサウナで話していた『マレーバクのおじさん』が支援者であり、反社会勢力のボス(黒田)だと気づきました。
ただここで引っかかっているのは、小戸川は何故『マレーバクのおじさん』が反社会勢力のボスだと気づいたのか、です。日記を読み記憶を思い出したのか、大門兄弟に聞いたのか、ドブやヤノに「ボス」の特徴を聞いたのか……見落としているかもしれないので、分かる方教えてください。
練馬区女子高生失踪事件の犯人は和田垣さくら
物語の中心となる謎、練馬区女子高生失踪事件の犯人は「和田垣さくら」でした。
行方不明の女子高生は三人組アイドル「ミステリーキッス」の三矢ユキ。10話で、遺体として海で発見されます。
死体遺棄をしたのはミステリーキッスの二階堂ルイとマネージャーの山本、反社会勢力のヤノと関口です。センターの座を三ツ矢ユキに取られた二階堂ルイは、殺害も覚悟で三ツ矢ユキを事務所に呼び出しますが、事務所に着いた頃には既に三ツ矢ユキは殺されており、死体遺棄の流れになりました。
その後、4番目のメンバーとして和田垣さくらがミステリーキッスに加入しますが、最終話で三矢ユキを殺したのが和田垣さくらだと判明します。和田垣さくらは、事務所にいた三ツ矢ユキを殴打、絞殺。理由は、ミステリーキッスのメンバーになるためです。
オーディションで落選した和田垣さくらは、マネージャーに食い下がると「4番目の評価だった」と教えられます。そこで、三ツ矢ユキを殺せば自分が繰り上がりデビューできること、そして「どんな手を使ってでも夢をかなえろ」という母の教えに従ったことで犯行に及んだのです。
犯行当日、小戸川がタクシーに乗せたのは和田垣さくら
5話で、小戸川がマネージャー山本と、ミステリーキッスのメンバーをタクシーに乗せ、事務所まで送り届けたときに「前にも誰かを事務所まで乗せた」と言いました。
山本は「メンバーは3人しかいないのでその中の誰かだ」と言いますが、小戸川は誰を乗せたのかはっきりとは思い出せません。その代わり、このとき山本と一緒に乗っていた黒猫「三ツ矢ユキ」の顔を覚えます。この三ツ矢ユキは、既に「和田垣さくら」です。
その後小戸川は、行方不明の女子高生が遺体で見つかったニュースを見ます。そして、テレビで報道されている「三ツ矢ユキ」の顔と、つい先日タクシーで見た「三ツ矢ユキ」の顔が違うことに気づきます。同時に、前に事務所まで乗せたのは「和田垣さくら」だったことを思い出します。つまり、小戸川は犯行当日である10/4と、山本との移動の計2回「和田垣さくら」を乗せたのです。
山本との移動のとき、小戸川が「和田垣さくら」を覚えていなかった理由として、「あのくらいの子たちはみんな同じに見えるんだよ」と言っています。人間が動物に見えていた小戸川にとって、似たような黒猫は黒猫でしかなかったのです。
反対に、山本との移動のときに「前にも誰かを事務所まで乗せた」と小戸川が言ってしまったことで、和田垣さくらは「犯行当日に自分が乗ったタクシーはこのタクシーだ」と確信したと思われます。その証拠に、最終話で「あとは犯行当日に乗ったタクシーが見つかればいいけれど、分かったかも」と母親に電話しています。
和田垣さくらがタエ子、長嶋聡、小戸川を殺した可能性有
和田垣さくらが小戸川のタクシーに乗り、笑うところでこの物語は終わりです。
犯行当日に乗ったタクシーを探していたのは、小戸川を殺すためと考えるのが自然ですが、実際に殺したかどうかは分かりません……。
また、オッドタクシーは本編とは別にYouTubeで見られる「オーディオドラマ」があります。副音声のようなもので、「幸せのボールペン」という別話が本編と同時進行で繰り広げられています。
オーディオドラマの内容を簡単にまとめると、練馬区女子高生失踪事件に小戸川が関与している可能性があることを心配した居酒屋ママのタエ子が、盗聴器をしかけたボールペンを剛力に渡して、小戸川の本音を聞き出すというストーリーです。複数の人物から様々な情報を得るために「幸せのボールペン」と名付け、ボールペンが回るようにしていました。
結果、色々な人の元にボールペンが渡りますが、肝心のタエ子は受信機の使い方が分からず盗聴できませんでした。その代わり、ボールペンが手に渡ったうちの1人、長嶋聡が電波を受信して聞いていたのです。
盗聴器の存在に気づいた和田垣さくらは、最後にボールペンを持っていたタエ子がいる店に行きます。このときも盗聴器を聞いているのは長嶋聡ですが、包丁で刺すような音がした後「次は(盗聴器を聞いている)お前だよ」と話しかけられてしまいます……。
それから和田垣さくらが小戸川のタクシーに乗る場面になるのですが、このとき既に「タエ子」と「長嶋聡」を殺した後だと考えるのが自然です……。長嶋聡は、大ファンであるホモサピエンスの「青空お笑いフェス」にもいませんでした。
でも真相は分からないので……そうでないことを祈るのみです。
芝浦の倉庫でドブを撃ったのは大門弟
9話で、芝浦の倉庫に柿花を助けに行った小戸川とドブですが、そこでドブが狙撃されます。ドブの銃を持っていた田中に追われていたため、ドブは狙撃者は田中だと思い込みますが、実は大門弟でした。
12話で警官2人が「大門弟が逃げている。銃を使ってしまったのでは」という推測を話しています。勝手に銃を撃つことは警察官として違反行為です。そして最終話で、撃ったのは自分だと大門弟がドブに告げます。
12話で田中がドブに銃を向けたとき、「玉は6発しかなく、既に6発使われているから撃たれない」と言っていたドブが撃たれたのも、1発は田中ではなく、大門弟が自分の銃で撃っていたからだと分かります。
小戸川の家にいたのは、動物の黒猫
1話から、小戸川に着いてきた何者かが押し入れにいる描写がありました。
失踪した女子高生なのか、はたまたイマジナリーフレンドなのか、小戸川の周りで推測され続けますが、13話で本物の動物の黒猫だと明かされます。
小戸川は人間が動物に見えていたので、2回目の事故によって病気が治った後、押し入れの猫も人間だったのではないかと焦りますが、「ニャー」と鳴く黒猫を見て「良かった」と安堵します。黒猫は、OP映像で鳴いている猫と同じ猫ですね。
ditch-11の正体はドブ
田中は15年前、笑風亭呑楽の消しゴムオークションで10万円を騙し取られています。その騙し取られた相手のハンドルネームが「ditch-11」でした。田中がハマっていた「ズーデン」というゲームアプリで1位をとっていたのも「ditch-11」だったため、異常なまでに執着していました。
13話、田中の目の前で、小戸川のポケットから笑風亭呑楽の消しゴムが落ち、消しゴムはもともとドブのものであることが明かされます。そこで、「ズーデン」のアカウントを見せろとドブに求める田中。小戸川が促し、ドブが確認するとその名は正に「ditch-11」。ここで長らく謎だった「ditch-11」はドブだったことが判明します。
「ditch」は「溝」という意味なので、シンプルに「ドブ」で間違いなさそうですが、ドブはオークションもズーデンも知らないと言っており、本当にドブかどうかは分かりません。「ズーデン」に関しては、ゲームで金銭面を工面していた白川かもしれませんね。
まとめ
13話という短い中で、見事な伏線回収劇でした!!!
今なら「人間ドラマが好きだったら絶対観たほうがいい!これ人間ドラマだから!!!」と勧めてきた友人に納得です(笑)
歌野晶午さんの「葉桜の季節に君を想うということ」と似ているなと思いました。オッドタクシーが好きな人はぜひ読んでみて下さい!
また新たに気づいた点があれば更新しようと思います。映画も楽しみです!
最後まで読んで下さり、ありがとうございました!
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